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"Britain will not buckle in the face of terrorism"  (©Independent)

“Britain will not buckle in the face of terrorism” (©Independent)

Mの前回の投稿を理論的補足しようと思って、バイオポリティックスとガバメンタリティについての投稿を書いていたのだけど。ちょっと、どうしても、リアルタイムで、取り上げておきたい事件が起きてしまったので。

イギリス時間の5月22日午後、ロンドン郊外のウーリッチというところで、英国軍兵士が宿舎近くで殺されるという事件が起きた。と、だけ、書くと、単なる殺人事件。ただ、こちらで、この事件、単なる殺人事件ではない、と捉えられている。犯人がテロリスト集団と繋がりがある(とされる)ナイジェリア系イスラム教徒二人で、白昼堂々、被害者をナイフでめったざしにして殺害した後、「アッラー・アクバル」と言いながらの目撃者に携帯で動画を撮らせたからだ。

Woolwich Attach:The Guardianの特集面

BBC Woolwich Attack(動画も見られます)

事件現場の様子が明らかになるにつれて、この殺人事件はテロなのではないかと言われ始め、事件の数時間後、イギリス時間の昨夜、政府見解でテロと認定された。それに続いて、緊急事態対策委員会(通称コブラミーティング)が政府関係者・警察関係者・MI5(イギリス版CIA)代表によって開催された。コブラミーティングは、ロンドン地下鉄バス同時多発テロや2011年のロンドンの暴動の際にも開かれたもので、このミーティングが開かれるということは、つまり、英国内の治安が相当の危機にさらされていると政府が認識している、ということを示す。

このニュースに際して、ふと思ったこと。

もし、白人キリスト教徒が「ジーザス」とかいいながらムスリムを刺し殺したらテロと呼ばれたのだろうか。もし、English Defence League(イングランド防衛同盟:イギリスの極右政治団体)のメンバーが「移民は社会の毒」とかいいながらアフリカ系移民やアジア系移民を刺し殺したらテロと呼ばれたのだろうか。

2000年に制定された英国テロリズム法によれば、テロリズムとは以下のように定義されている。

第1条

(1)・・・テロリズムとは以下の行動を行うこと又は以下の行動を行うという脅迫することを意味する。(a)第(2)項の範囲内の行動であって、(b)行動又は脅迫が政府に影響を与えること、又は民間人もしくはある階層の民間人を脅えさせること、及び(c)行動又は脅迫が政治的、宗教的又はイデオロギー的要因を進展させる目的で行われること。

(2)本稿に定める以下の行動。(a)人に対する重大な暴力を含む。(b)財産に対する重大な損害を含む。(c)その行動を行った者以外の人の生活を危険にさらす。(d)民間人又はある階層の民間人の健康又は安全に対し重大な危険を作り出す。(e)電子システム重大な妨害又は重大な中断を企図する。

今回のテロ(とされる)殺人事件の手段は、一般の刑法上の殺人と同様である。それにも関わらず、今回の事件が通常の殺人という犯罪ではなく、なぜテロ行為として取り扱われ、分類される必要があるのだろうか。

一般の刑法上の殺人とテロが異なるのは行為を重視するか目的を重視するかという点にある。刑法上の殺人は人を殺したという行為自体が重視されるが、テロにあっては、行為の目的・動機が客観的な法益侵害以上に重視され、特に目的に政治性等があればテロとされる。しかし、テロリストと分類される人々は、自らの行動をテロリズムとは言わないし、自らをテロリストとは呼ばない。こうした分類は、行為主体ではない人、特に国家が暴力的な敵対者にたいして貼るレッテルである。ということは、テロリズムとは、ある特定の行為を指すのではなく、その行為や行為主体に対応する外部の人々の心理状態を指しているといえるのかもしれない。

では、外部の人々のどのような心理状態が今回の殺人事件をテロと認定させるに至らせたのか。まず即座に考えられるのは、欧米各国の政治イデオロギーの底流にあるイスラムフォビアである。これは説明するまでもない。もう少し大きい視点で考えてみると、人は自分たちが正しいと思っているもの(政治信条や社会的制度)を揺るがせること、「不安定さ」に対する恐怖心を常に持っている。だから「不安定さ」を生み出す要因を罰したい。けれども、通常の刑法では行為が起こらなければ罰することが出来ない。ところが、ある行為をテロと認定すればその行為の目的自体を罰することが出来る。つまり「今後起こりうる同様な行為」を未然に罰することができるのである。今回の殺人事件は、通常の殺人事件と、行為・方法そのものはなんら変わらない。大規模な殺戮が行われたわけではないし、爆弾等が使用されたわけでもない。しかし、そうした殺人事件をテロと認定したことで、今後、「イスラム教徒が、アッラーの名の下に、ナイフを使って、他人を殺害」したらテロになるというプロトタイプが出来たわけだ。

A

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